信じる誰かがいる

少年は 中学3年生だった
勉強は 大嫌いだった
先生も 好きじゃなかった
でも 学校は休まずに来た
茶目っ気があって 憎めない子だった
小さな子だったが 気は人一倍強かった
大きながたい(図体)の同級生でも 
気に入らなかったら つっかかっていった
同級生も 面白がって見ていた

ある子が 風邪で一日休んだ
少年は 寒い玄関口に立って待っていた
そして 顔を見るなり 怒った
「なんで昨日休んだんだ!」
少年の左目は 黒ずんでいた
「どうした?」
「お前がいなかったから 殴られた」

少年は いつものように喧嘩を仕掛けた
しかし 殴られ 負けた
それが 悔しかったのではなかった
いつもなら 仲裁に入る奴がいる
そう信じて 喧嘩を売った
でも 今日はいなかった
裏切られたような気分になった
あいつがいれば なんとかなかったのに
無性に 腹が立ってきた
その鬱憤を晴らそうと 玄関口で待っていた

経緯(いきさつ)を聞いた子は 笑った
少年も 苦笑いした

〔2020年3月9日書き下ろし。15歳の冬、信じて頼ることを少年から学んだ中学時代のエピソード。少年のような子の居場所は、いま学校にあるのだろうか〕