習慣づける

郵便局で 書き損じハガキを交換した
枚数は8枚
ハガキよりも 切手に交換した
手数料を 始めに払い
そして 不足分を支払った
細かい硬貨を 財布から取り出す
「すいません 年寄りなもんで」
「いえいえ 大丈夫ですよ」
にこやかに応対する 女性局員
後ろには誰も 並んではいない

薬局で処方箋を出した
「お薬手帳は お持ちですか」
「いや 年ですかね 大事なことを すぐに忘れてしまいます」
 
仕事の打ち合わせの 連絡があった
自宅に来るという申し出を 断った
当日 事務所を訪ねた
「急なことで すみません」
「年寄りは 暇だし 散歩のつもりで出てきました」
彼が出向いてきて 事務所に戻るまでの 移動時間を考えた
ゆうに2時間は費やされる
その時間があれば やるべき仕事に集中できる
仕事に熱心な彼には 時間の余裕はなかった
年寄りは 現役の邪魔にならぬよう 
ささやかな応援をする

「年寄り」という言葉は
人と人を 優しくつなぐ言葉であってほしい
したたかに その言葉を使い分けることが
世間に優しさをふりまく 最期のお役目
だから身構えずに 使うことを習慣化する
もう立派な年寄りになったから 意地は捨てた
今は 年とることに慣れるよう心がけて
暮らしています 

〔2019年11月5日書き下ろし。原稿書きに困っていたらメールでヒントを与えてくれた。感謝します。いまは、ずるがしこく上手に使い分ける訓練中です〕